精神科の病名について(1)

病名を見て不安になる時

よく「精神科(心療内科)に行ったらこんな病名がついたんですけど・・・」と相談されることがあります。最後の「・・・」部分にはいろんな質問が入りますが、こうした相談は医師の先生にしっかりと説明を受けた人からされることはありません。

大体は十分な説明がなかったり、診断書やその他の書類に書かれていたのを見た、みたいな場合が多いようです。そのあとでインターネットでいろいろ調べて不安になってしまって・・・というようなパターンが多いように思います。

もちろん医師の先生にしっかりと説明を受けることが一番です。ただ、どうしても難しい時はありますよね。この記事はそうした人向けに書いたものになります。

精神科の病名は、他の科の多くの病名と異なる特徴を持っており、そのためにちょっとわかりにくいところがあるのです。なぜそうした特徴があるかを説明すると長いので後回しにして、ここではまずは精神科の病名の特徴についてあげることにします。

精神科の病気は「目に見えない」

手がとても痛いのでレントゲンを撮ったら骨折していることがわかった。体調不良なので血液検査をしたら血糖値が高く糖尿病であるとわかった。こんなふうに、現代医学の進歩から身体の病気の多くは(もちろん全てではないにせよ)検査の結果、はっきりとした証拠を元にして診断されます。

しかし、精神科の病気にはそうしたものはありません。なぜなら、人の心は「目に見えない」ものだからです。そのため、精神科の病名は診察の中でその人が語った症状と、それからわかる経過を元に診断がされることになります。反対にいうと、はっきりとした証拠が見つかることができるなら、それは身体の病気としての処置がされることになります。

当人からすると、診察の内容だけを根拠に重大かもしれない病名を告げられ、それを元に服薬や休職などを勧められるのですから、不安に思うことが当然です。しかし、それが精神科の病名の特徴なのです。

時折、特定の検査結果が用いられることがあります。代表的なのは保険適応にもなった、光トポグラフィー検査という脳の血流を調べる検査です。しかしながら、光トポグラフィーはあくまで診断の補助として用いられるものであり、それのみを根拠として特定の病名を「診断」することはあってはならないと強く勧告されています(参考:日本うつ病学会HP)。しかし残念ながら、こうした検査を保険適応でなく(あまつさえ無料で!)実施した後に高額な治療に誘うような医療機関も存在しているので、注意が必要です。

精神科の病名は「作業仮説」

精神科の病名は、とりあえず今後の経過で方針は変わるかもしれないけど、今のところは○○だと診断して対応していきましょうね、という「作業仮説」であると理解しておくと良いでしょう。もちろん確定診断がでる場合もありますが、時間経過や年齢といったものでその名前も変化していくことが自然なのです。

また診断書や書類に書かれた病名というのは、制度の利用などのために便宜的に付けられるものも多くあります。「単にそこに書かれているもの」以上の意味がない時もあります。主治医の先生に質問せず、インターネットで病名を調べて早合点する・・・というのはなるべく避けた方が良いと思います。

しっかりと説明してくれる先生を見つけよう

繰り返しになりますが、一番いいのは先生にしっかりと質問することです。精神科の病名はわかりにくいですから、不安に思うことはある意味当然です。わからないことは主治医の先生に質問しましょう。自分の疑問に対して、しっかりと説明をしてくれる先生が主治医だと安心できると思います。

「精神科の病名について(1)」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 精神医学の歴史(前半) – メンタルヘルスQ&A

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